l_n_m’s diary

よわい電気系の日記(本当にただの日記)

リズと青い鳥

リズと青い鳥

先日公開された映画を見てきた。
「響け! ユーフォニアム」は見ても読んでもおらず(興味はあったが)、そっちと関係あると知らずに見てしまった。
凄く楽しめてしまった。
なんということだ。これでは原作を読まなければ気が済まないではないか。いや、音楽がテーマである以上音響にもこだわっているだろうしアニメも見なければいけないかもしれない。研究している場合ではない。
いや研究しないと怒られるんだけど。

というわけで原作のうち買えるものを生協で取り寄せて購入。
いくつか取り寄せ不可なものがあったんだけどどうしようかな。

記憶に残ったシーン

以降は多少のネタバレを含むので注意されたい。
これ読む人がいるかどうかわかんないけどさ!!

導入からオープニングまで、リズの世界

いきなり水彩画調で始まる。どうした、こういうのを見るつもりで来たわけではないぞ、と驚いているとそこでネタばらし。現実の世界と、そこで演奏する曲「リズと青い鳥」の物語の世界を交互に描く構成だった。
楽曲自体がある物語を元に書かれたもので、視聴者にとって物語の中の物語、というのは意外と分かりにくい(私のときのセンター試験現代文を思い出す……)。
しかしそれを分かりやすく表現しているな、というのはすぐに感じた。小出しにすることで飽きさせないし、視聴者の理解と登場人物達の理解が同時に深まっていくというのはとても良かった。記憶喪失のキャラクターを登場させることで世界観の説明を自然に行わせる、なんていう手法はありきたりだが、それを少し捻った構成と言えるだろう。

部活の始まり、キャラクターの話

私は原作を知らない。一方で部活には多くの人物が登場する。希美とみぞれが冒頭に現れたところで、この2人が中心なんだな、と思ったところで、もう頭がいっぱいいっぱいだ。一度に出されても分からなかっただろう。
2人の次に現れたのが部長だ。そうか部活の話なのだ、そりゃ部長もいるわ、と自然に飲み込めた。個人名は確か出ていなかった。原作もそうなのかは知らないが、「部長」という名前で登場したことは今思えばとてもありがたい。
その後続々とメンバーが登場するが、ここでは「その他大勢」という理解でいい。というか、この後のほとんどのシーンでその理解のままで良かった。そちらをある程度掘り下げたほうが原作ファンは嬉しいだろうが、にわかとしてはそちらに注目されてもちんぷんかんぷんである。製作者サイドとしても好きなキャラはいるだろうし辛い判断だとは思うが、本当に重要なメインシナリオ以外を削ぎ落としてくれたおかげで分かりやすくのめり込みやすいストーリーに仕上がっていたように感じた。ありがたい。

2人の過去、2つの物語

希美とみぞれの関係について、2人が正反対の性格をしていることは冒頭で分かるが、みぞれ視点での希美への執着については謎なままだった。物語が進むに連れて希美の退部が明かされ、ほぼ同時にリズの締めが明かされる。
そこで視聴者は「ああ、この物語は現実と重なっていたんだな」ということを知る。最高のタイミングだ。
少し前に、曲中の掛け合いのパートではオーボエがリズ、フルートが青い鳥を表現していると言われている、と先生から話がある。みぞれの自由さを青い鳥と重ね、先生の言葉通りに受け取ったみぞれはリズの気持ちが理解できずに演奏がうまくできない。

クライマックス

相手を束縛していたのはどちら?
一緒にいたいと願うみぞれには、演奏者としての力があった。それを押さえ込ませてしまっていたのは希美だった。
2人はそれぞれ別のことを理由に気付く。自分の担当する楽器が表現するリズの世界の登場人物と同じ立場ではない、むしろ相手が表現する登場人物の立場にあると。
みぞれはリズではなく青い鳥の気持ちを持ち、部活で問題の掛け合いのパートを披露する。その結果希美は自分の力の無さを痛感しみぞれを避けてしまう。
そこでみぞれは逃すまいと希美を捕まえ、2人は……
このみぞれが演奏するシーン、それまでの音響とは違ってオーボエが強い。とても強い。それまではただ鳴っている程度で特に何も感じなかったが、ここではみぞれの心情を訴えかけてくる。是非聞いて欲しい。
さて、自分は離れたくないにも関わらず別れを告げられたことはあるだろうか。幸いにして私は無い。付き合ったことも無いからな!
とはいえ似たような経験はあるもので、君が言うなら逆らえない、という気持ちも、別れることになっても相手の為を思えば決して不幸ではないことも分かる。
逆に、相手を縛りたくないが故に別れを告げなければならない気持ちもよく分かる。相手の良さを殺さないために自分が身を引く、そんな経験もあるからだ。
いずれにせよ、だらだらと甘えた関係でいることをやめ、互いの道を歩んでいく為の決断であることには違いが無い。そのときの一言では表せない気持ちをこの映画は思い出させてくれた。

その他感想

もはや高校時代なんて遠い昔だけれど、そんな身が張り裂けそうな青春をしたかったなぁ、などと思ったりも。私の経験は恋とはちょっと違うので。
映画全体を通して、起承転結とエピローグ、登場人物、2つの物語の関係と、とても分かりやすかった。
分かりやすい一方で説明がくどいと感じることもなく、その後を想像する余地もあり、凄く良い出来だったと思う。
ただ、よくある「ここが盛り上がるシーン!」みたいなあからさまな見せ場は無い。思いを通わせた2人は息を合わせていざ本番、となるのが普通なのだろうが、この作品はそれが語られないまま終わってしまう(他の作品で語られた部分なのかは知らない)。
そのため、あっさりすっきりとした中に切なさの残る、夏の終わりに飲むラムネのような後味がした。
それこそまさに私がこの映画に期待したものだった。
原作もストーリーも知らなくても、プロモーションムービーやタイトルから感じた雰囲気。それを全く裏切らないものだった。
総括してとても良かったし、是非人に勧めたいと思う。

気になったところ

鳥が羽ばたくシーンが終盤にあるが、数回全部同じ動きに感じられた。本当に使い回しなのかどうかは分からないが、何か違いが感じられたら良かったと思う。
少しずつ遠くにいく(小さくなっていく)ような演出でもいい。繰り返しがあるだけでうーんとなってしまう。使い回しでないことを明白に示して欲しいなと。わがままだけれど。

今後

まさかユーフォニアム関係とは思っていなかったが、事実そうだった以上シリーズを追いかけたくなってしまった。
前述の通りとりあえず最初の小説を買ったのでそこから読んでいきたい。
あー、積んでる本も山のようになってるのに……
人生、やりたいことだらけだ。素敵な物に出会えたことに感謝を。また次の素敵な物に会えますように。